どうも、のうみです。
2020年1月10日に公開される映画「シライサン」の監督でもある安達寛高こと乙一さんの初の長編小説「暗黒童話」を紹介。
『私』と『菜深』は異なる人格として描かれている
『私』と『菜深』は異なる人格として描かれている
突然の事故で記憶と左眼を失った女子高生の私が移植手術によって死者の眼球を移植することに。
その左眼に提供者の生前の体験した記憶が映像として見え始めることから物語が動き出す。
見知らぬ少女と遊んだ映像や町の光景などを頼りに記憶をなくした私は左眼の記憶に導かれ旅にでる。
そこに待っていたのは左眼の記憶の中にいた臓器提供者の和弥の姉である沙織や喫茶店憂鬱の森の店長の木村が優しく受け入れた。
だが左眼の記憶が見せたのは心温まる記憶だけではない。
暗く冷たい記憶それは臓器提供者の和弥の最後の記憶、そこには恐ろしい悪夢が映し出されていた。
『私』と一緒に『読み手のワタシ』は旅をする
『私』と一緒に『読み手のワタシ』は旅をする
孤独だった私とは何者でもない人格であり唯一の思い出は瞳に宿る和弥の記憶のみ。
その唯一の思い出だった記憶を支えにしていた私。
徐々に菜深の人格と記憶が戻ってくることに読み手の「ワタシ」と共に旅をしていた主人公の「私」が消えていくように描かれてる。
そして菜深がその消えゆく私のことを決して忘れないと固く誓うシーンに胸が熱くなった。
乙一さんの作品は明るい要素【白乙一】と暗い要素【黒乙一】の落差があるのですが、どの作品も読みやすいので小説を読んだことのない人にもオススメ。